屋久島の外周道路を歩いていた時の事だ。 永田の集落を西へ抜けて西部林道へと入っていこうとしていたその道中で、小さな、本当に小さな長さ10m程の橋を渡った。
日本の橋には多くの場合、その橋の両端に橋の名前や川の名前を記したプレートが埋め込まれている。 橋を渡るときはなんとなくそれを確認するのが癖になっているのだが、この時はそこに書かれた名前が時に強く目を引いた。
一キロ川。
こちらは川の名前のプレートだが、その反対側には橋の名前として一キロ川橋と書かれたプレートが埋め込まれていた。 つまりこの小さな橋は一キロ川にかかる一キロ川橋という名前の橋というわけだ。
余談だが、この橋や川の名前が書かれたプレートは橋名板(きょうめいばん)という。 橋名板の設置には特に明確な基準が存在するわけではないようだが、ほとんどの橋にはこれが設置されている。
世の中には様々な名前の川があるが、この一キロ川はなかなか独特な名前だと言えるだろう。
「一キロ」というのは普通に考えれば1kmのことだろうか。 もしそうだとして、その1㎞は何を指しているのだろうか。 川の長さが1kmあるとか、どこかを基準にしてここまでの距離が1kmだったとかなのか。 あるいは距離とは全く関係のない別の意味を持つ「キロ」という言葉なのか。 方言が訛ったとかそういう可能性も考えられるが、最初に「一」という数字がついているので「キロ」は単位のように思える。
インターネット上で様々な情報が手に入る現代、何かしら情報があるだろうと調べてみたものの、驚くほどこの橋に関する情報が見つからない。
Googleで検索してもヒットするのはわずか3件。 類似結果を含めて再検索しても5件しか出てこず、その内4件は鹿児島県の橋梁点検結果や橋梁修繕計画のものだった。 もう1件はなぜか名前と座標だけが登録されたYahoo!ロコのページ。
写真や口コミは何もなかったが、誰かがこのページに情報を登録した以上は一応存在は知られているということか。
橋梁点検結果の方は鹿児島県が実施した橋梁点検の結果をまとめたPDFだった。
橋梁点検結果(鹿児島県) - 10476_20220711143624-1.pdf
この29ページ目に一キロ川橋の項目がある。
番号 | 2193 |
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橋梁名 | 一キロ川橋 (イチキロカワハシ) |
路線名 | 県道上屋久永田屋久 |
架設年次 | 1985 |
橋長(m) | 9.0 |
幅員(m) | 5.0 |
管理事務所名 | 屋久島事務所 |
行政区域 市区町村名 | 屋久島町 |
点検実施年度 | H30 |
点検記録判定区分 | Ⅰ |
架設年次は1985となっている。 他の資料では1984となっているものもあったが、いずれにしてもそこまで極端に古い橋ではないようだ。 このくらいならまだ橋が作られた時のことを知っている人もいそうなものだが、どうなのだろうか。
後になってこんなに気になるなら当時もっと現地の人に聞き込みをしてみればよかった。 いずれにしてもこの名前には何かしらの由来があることは間違いないだろう。 特に川の名前のようなものに何も意味のない適当な名前を付けるとも思えない。
その由来が失われたものも世の中に多いだろうが、もし今でもどこかしらに伝わっているのであればそれを知りたいものだ。